製造現場での異物混入対策のザ・裏側

管理者目線の日誌

異物に関するクレーム(苦情)とは?

ときどき、食品中の異物混入の話題がニュースになりますよね。大概は悪意や恨みを持った会社関係者や商品を買ったお客様、愉快犯や悪ふざけなどもあるとは思いますが。。。

こういう話題が世間を騒がせたあとには、関連法令がどんどんキビシくなる傾向にあります。2008年に英国の規格協会が出したPAS96などという民間認証規格もクローズアップされてきて、、この内容を見ると日本ではそんな事起こらないだろうというものまで管理要求されていて

-例えば海外ではありがちなちょっと「レベル」の違うテロ予防のための要求

ひとりの犯人のモラルの問題で、企業にそこまで負担をかけるのは少しやりすぎ防衛の部分も見え隠れしています。

今日お話したいのは、そういう故意に入れらる異物に対する防御方法ではなく、偶発的に入ってしまうかもしれない一般的な形のある異物の防御方法のことを取り上げたいと思います。

消費者庁の調べでは、食品の苦情の約30%が「異物が入ってた!!」というものらしいです。

消費者行動に関する実態調査 (jtuc-rengo.or.jp)

製造現場での異物除去方法

製造現場では、製品が最終梱包される前に万一のために異物を取り除く工程が設けられます。

この工程は、

1 異物を見つける手段 

2 異物を取り除く手段

2つが考えられ構築されています。
1については人の目による目視検査やビデオ検出、X線検査などがあります。
2については製品の形状(液体なのか、個体なのか、大きいのか小さいのか)と物性によって様々ですが、フィルターやトラップと呼ばれる除去装置を使って取り除きます。

金属の異物が心配ならマグネットの磁性を使うこともありますが、篩(ふるい)のような網目・メッシュ状板を通過させる形が一般的です。食品なら0.5mmとか1mm程度の異物のサイズまでは取り除かれることが多いです。

ある程度のサイズまでということですね、1mmといえば、微細な鉄粉などは完全に篩(ふるい)を通過してしまいますから。
品管のものがこういっちゃなんですが、100.000%ということは絶対にありません

先にも述べましたが対象となる製品の状態によってどこまで除去できるかが決まりますが、最終的には導入コスト・採算・出来高/時間、歩留まり・ロス量などを配慮してどこまで除去をするのかが社内事情で決定されています。

どんなものが除去されるの?

医薬品の輸入原料(食品でも同じような事例がありましたが)は、ホントに昔は色んな‘お土産’が入っていました。
例えばスプーンや社名入りボールペンなども粉末原料に入っていたことがあります。
ひどいものですが、逆に誰が入れたかわかるので、改善がしやすかったです。

最近はそんな事ないですね。海外製品もうんとレベルアップしています

最近では、私たちのインラインフィルターが取り除いているものを確認しても微細なサイズの異物ばかりです。良いのか悪いのかわかりませんが、異物のサイズが小さ過ぎて元の形が想像できないのです。

この異物を電子顕微鏡で覗いて表面の状態を確認したり、傾向X線分析などで組成分析もしますが、でもその結果を得ても、元々何だったのかが推測できない。元の形がわからないから混入場所が特定できない。よって完全に、改善できないという負の連鎖になってしまっています。

また、インラインのマグネットフィルターからは磁性のある金属の微粒子も多く取り除かれています。

のび太

ステンレス材料は錆びないってことで製造設備には利用されています。

本来、ステンレスは磁石にくっつかないのですが、破片(=異物)になるほどのショックを与えられた場合、磁性をもって磁石にくっつくようになるんだよ。

しかしながら出荷先からの微粒子金属異物のクレームってまったく無いんですよ。

どこの金属製設備(配管やポンプなど)使ってますからね。

「自分たちが混入させてしまった可能性」

「クレームしても原因特定まで至らないであろう。というあきめ」

があるんでしょうね。

異物管理の手法とは

このような、異物を入れない管理の手法としては、まずは工程毎のリスクの洗い出しということになります。リスクの大きさに合わせてそれを取り除く手法を考えることをハサップ(HACCP)とも言います。

ハサップについては今、飲食関連では法令で義務化されていますので、いろんな書籍やセミナーが世の中にはあります。

深堀りキーワード

  • PAS96

PAS 96:2014 ガイドラインは、製品・プロセス・または食品システムへの意図的な攻撃を検出・緩和するために作成された規格

bsi_pas96_180425.pdf (bsigroup.com)
  • ハサップ(HACCP)

2020年6月の法令改正により、食品事業者には義務化がされています。

HACCP(ハサップ)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

キーワードを入手

PAS96については、BSI(英国規格協会)が英文ガイドラインを出しており、また、その翻訳ガイドラインもBSIグループからは発売されています。

BSIジャパン書籍販売のWEBページ
(www.bsigroup.jp/standards)から外部の販売サイトを通じて、ご購入いただけ
ます。価格は、19,800円(税込) 

故意の異物対策としては、以下ガイドブックが大変参考になります。

故意とは、、、会社内部とと外部の犯行者が想定されます。その犯行者」からどうやって会社を製品を守るのかっているのが食品防御という考え方になります。

この分野はあまり深い裾野が広くありませんので、情報収集を進めると、最終的にはこの本の著者の先生にはこの分野の第一人者です。わたしも近年色々な文献読ませて頂きました。


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ハサップ(HACCP)には色々な書籍が出ていますが、せっかく異物混入をまじめに考え、管理方法を習得しようとするなら、ゆくゆくは認証規格を取得することをセットで考えることをお勧めします。

ISO22000やFSSC22000などは、製造者が安全な製品を提供するための、管理手法を説いた認証規格でハサップ(HACEP)が取り込まれています。

これらの認証取得には会社の規模や適用範囲にもよりますが、年間30-50万円ぐらいの経費がかかってきます。また、経費は取得時だけでなく、認証を継続していくためには毎年監査を受ける必要があります(認証期間が1年ですので更新が必要なのです)。

そう考えると、学習する本はハサップに加え、ISOとかFSSCとか書いてある本がお勧めです。

下のお高いほうの書籍は認証を取っている会社や、認証の監査員さんも持っているような本になります。



ISO/TS22002-1とかFSSC22000については、別の日誌でまた紹介いたします。

簡単にいうと、ISO22000の要求事項 + ISO/TS22002-1の要求事項 = FSSC22000

ということになります。FSSCのほうがハードルが高めです。現場での異物管理の基礎として具体的な内容はISO/TS22002-1のほうがわかりやすいです。


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